そもそも会社とは、顧客のために存在している集合体であり、従業員のために存在しているわけではありません。
そんなことは多くの従業員の皆様が分かっています。
だからこそ、社長は顧客に何を届けるのかを明確に示し、その明確さと一貫性が従業員にとって働く誇りになるのです。
決して
「従業員に働きがいを持ってもらうにはどうすればいいか」
「従業員を守るために会社としてこの経営判断をするしかない」
から思考が始まってはいけません。
従業員から始める
- 「従業員に働きがいを持ってもらうには、どうすればいいか」
- 「従業員を守るために、会社としてこの経営判断をするしかない」
顧客から始める
- 社長が顧客に何を届けるのかを明確に示す
- その明確さと一貫性
- 従業員の働く誇りになる
では、世界的に高い営業利益を獲得している Apple はどのように組織をまとめているのか。
ブランドエクスペリエンス経営の観点から分析したレポートを、無料でご覧いただけるようにしました。
- 1983Apple Lisa を発売(9,995ドル)。のちに Mac チームが「明確な目的が欠けていた」と総括
- 1984Macintosh 128K を発売。販売予想50万台に対し、実績は3万台
- 1985社内の権力闘争の末、ジョブスが Apple を去る
- 1986Pixar を買収
- 1994「次のストーリーテラーになる」と公言
- 1995Toy Story が公開される
- 1996年末、Apple に帰還
- 1997開発者会議で「顧客の体験から始めて、技術へと逆算しなければならない」と語る。9月28日、Think Different の CM を初めて放映
本文と付録、合わせて2点を以下に用意しています。
130ページのレポートの要点
本文は130ページあります。お読みになる前に、どんな話が書かれているかを5つに分けてお伝えします。
1985年、Apple は顧客を「目隠しの愚か者」として描いた
1984年のスーパーボウル中継で伝説的なCMを流した翌年、Apple は続編のCM「Lemmings」を放映しました。IBM 互換機を使い続けるビジネスマンたちが、目隠しをしたまま一列に崖から飛び降りていく、60秒の映像です。
売り込みたかった相手そのものを愚か者として描いたこのCMは、視聴者の強い反発を招きました。しかも、CMで宣伝した製品は約束どおりに出荷されませんでした。Apple はその後14年間、スーパーボウルに広告を出していません。第1部は、このCMの主役が顧客ではなく、Apple が売りたい製品と打ち倒したいライバルだったことから始まります。
1985年「Lemmings」
- 主役は売りたい製品とライバル
- 顧客を目隠しの愚か者として描く
- 反発を招き、14年間スーパーボウルから遠ざかる
1997年「Think Different」
- 製品の機能を一度も語らない
- 使う人がどんな人になりたいかだけを語る
- エミー賞などを受け、広告史に残るメッセージになる
Pixar でジョブスの考える順番が逆になった
Apple を追われたジョブスが率いた NeXT は、商業的には成功しませんでした。9,995ドルのワークステーションは奇しくも失敗した Lisa と同じ価格で、同じ間違いをくり返していました。
もう一つの会社、Pixar がジョブスを変えました。「どんな技術も、ダメなストーリーを良いストーリーには変えられない」という創造責任者の方針のもとで、ジョブスは観客の気持ちを主役に置いた物語が成功するのを目の当たりにします。1994年には公の場で「次のストーリーテラーになる」と語りました。ジョブスは技術を作る人から物語を作る人へと、自分の名乗り方を変えたのです。レポートの見立てでは、1997年の開発者会議での「顧客の体験から始めて、技術へと逆算しなければならない」という言葉は、この12年がなければ出てこなかったものです。
Apple は復帰後も売るものを変えていない
1997年の「Think Different」のCMで、Apple は製品の機能を一度も語りませんでした。語ったのは、Apple のコンピュータを使う人がどんな人になりたいかだけです。
その後の iMac はケーブル1本、iPod はホイール1つ、iPhone は物理ボタン1個。製品の形は何度も変わりましたが、テクノロジーが苦手な人でも迷わず使える道具を届けるという一点は変わっていません。CEO が代わっても売るものが変わらないこと。レポートはこれをブランドの一貫性の正体と呼んでいます。
捨て続けた Apple が50年削らなかったもの
Apple は機能も端子も物理ボタンも、業界の標準も、自社の伝統までも捨ててきました。けれど、ロゴだけは削るどころか目立たせ続けています。ロゴは「自分は Apple を使っている人間だ」という証であり、Apple が売っている「クリエイティブな自分」の中心にあるからです。
ブランドの一貫性とは、すべてに妥協しないことではありません。組織の中で、絶対に妥協してはいけないものがはっきりしていることです。それがはっきりしているから、ほかのすべてを手放せます。
もっとも、Apple も間違えなかったわけではありません。レポートは Touch Bar や、端子を USB-C だけにした MacBook を、判断の主役がお客様ではなく「自社のデザインの理想」になっていた数少ない失敗例に挙げています。それでも Apple には戻る場所があったから、戻ることができました。
後半は自社に当てはめる3つの道具
第6部から第8部では、Apple の読み解きを自社で使える形に組み直しています。
1つ目はブランドを言葉にする「ブランドベース」です。お客様が手に入れたい理想の自分、今の自分、そうなれない理由(敵)など、9つの要素で書きます。9つのうち、自社が主役になるのは「自社の役割」の1つだけで、残りの8つはすべてお客様の物語です。Apple は Apple Store や基調講演、CMで自社の世界に触れられる場所をたくさん持っていますが、中小企業にはその場所がありません。そこで、この9つを物語の文章にし、Web上のページとして形にするところまでを扱っています。
2つ目はお客様がファンになるまでの道のりを6つの章に分ける「BXジャーニー」です。広告、周りのユーザー、店舗と接客、開封と使い始め、日々の利用、確信。6つのどこででも同じ「〇〇な自分」を予感させられているかを確かめます。どこか1つで別の印象を与えると、お客様の中で物語が壊れます。
3つ目は現場の判断を支える「BXアーキテクチャ」です。「お客様第一」のような言葉だけでは、現場の判断は動きません。部門ごとに、判断の基準、行動の基準、見るべき数字、見なくていい数字を書き出します。レポートは「見なくていい数字」をいちばん大切だとし、これを書けない部門は、ブランドが現場で詰まっている場所だとしています。
あなたの会社への5つの問い
第9部では、Apple の物語を自社に持ち帰るための問いを5つ投げかけています。
- あなたの会社がこれまでに犯してきた判断ミスを認められるか
- あなたの会社が今、本来の姿からずれていることを認められるか
- あなたの会社の創業者は誰のために、どんな自分を届けたかったのか
- あなたの会社の各部門で「見なくていい数字」を書けるか
- あなたの会社の主役は誰か
Apple ですら本来の姿に戻るまでに長い年月がかかっています。ずれていること自体は異常ではありません。戻る場所は、創業者の最初の動機や最も古いお客様の記憶の中に必ず残っている。それがレポートの結びです。
後継者として会社を継ぎ、何を守り何を変えるかに迷っている経営者の方や、自社のブランドの一貫性に不安を感じている幹部の方に、特にお読みいただきたい内容です。
2つの資料
本文(PDF)と、自社で使うための作業フォーマット(スプレッドシート)です。
分析レポート本文
ジョブスの追放から復帰までの12年、Apple が「顧客の体験」を主役に据えるに至った意思決定の組み替えを、全10部で読み解いた本文。
PDF / 全10部・130ページ
レポートを読むApple の12年を読み解く
- 第1部序章:思考の主役は、いつから顧客になったのか
- 第2部ジョブス自身が、思考の主役を間違えていた11年
- 第3部Pixar がジョブスを変えた
- 第4部復帰後の Apple は、何から決めるようになったか
- 第5部顧客の体験を守るために、Apple が捨ててきたもの
フレームワークにする
- 第6部ブランドを言葉にする――ブランドベースと BXページ
- 第7部顧客の体験を6章で設計する――BXジャーニー
- 第8部現場の判断装置――BXアーキテクチャ
自社に持ち帰る
- 第9部あなたの会社にも、これがある
- 第10部おわりに
付録一式(BX経営フォーマット)
ブランドベース・BXジャーニー・BXアーキテクチャの3つのフレームワークを、Apple 試作版と自社記入用シートで収録。全10シート構成。
Google スプレッドシート / 全10シート
フォーマットを開く- 1ブランドベース(付録1)9つの要素を埋めて、自社の顧客の物語を見つける
- 2BXドック(付録3)9つの要素をヒット映画の7つの構造で文章にする
- 3BXジャーニー(付録4)6つのタッチポイントすべてで、同じ「○○な自分」を予感させているか確かめる
- 4BXアーキテクチャ(付録5)8部門の判断基準と「見なくていい数字」を書き出す
- 5捨ててきたもの年表(付録2)ブランドのために何を捨ててきたかを記録する
引き続き、皆様の会社がますます彫刻のように洗練度が増すことを、心より願っております。
BX 経営支援パートナー 原田