The Half-Second

朝、あなたは、
鍵を、ひねる。

エンジンが、かかる。ただ、それだけのこと。
——一秒にも、満たない。あなたは、何も、考えていない。

Taken for Granted

かかって、
当たり前。

かからない朝なんて、想像したことも、ない。
——だって、昨日も、その前も、ちゃんと、かかったのだから。

But, One Morning

でも、もし。
その半秒が、
なかったら。

鍵をひねる。うんとも、すんとも、言わない。
——その時はじめて、気づく。どれだけ、それに、頼っていたかに。

The Quiet Truth
「行けた」の裏には、
いつも「かかった」が、ある。

間に合った朝。駆けつけた夜。
——その全部の、いちばん最初に、あの半秒が、あった。

Everywhere You Needed to Be

子どもが、
熱を出した夜も。

面接に向かった、朝も。しばらく会えていない親に、会いにいく高速でも。
——車は、ちゃんと、動きだした。だから、あなたは、行けた。

You Never Doubted

あなたは一度も、
疑わなかった。

かかるかな、と、身構えたことすら、ない。
——その"疑わなくていい"が、どれだけ、贅沢なことか。

Where It Came From

その安心は、
どこから、
来ていたのか。

あなたが、気にとめたことも、ない場所。
——鍵の奥。エンジンの、さらに、奥。

Someone You’ll Never Meet

手のひらほどの、
黒い部品が、ある。

火花と熱を、毎回、受け止める、小さな一片。
——それを、あなたの顔も知らない誰かが、型に、樹脂を、込めていた。

Sixty Years of the Same Half-Second

六十年、同じ半秒を、
つくり続けた人が、いる。

目立つ仕事じゃない。誰にも、褒められない。
——それでも、あなたの朝が狂わないように、今日も、黙って、型と向き合っている。

So, Tomorrow Again

だから明日も、
何も考えずに、
鍵を、ひねれる。

考えなくていい、ということ。それこそが、誰かの、静かな仕事の、成果だ。

Please, Keep Taking It for Granted

当たり前に動きだす毎日を、
どうか、当たり前だと、
思っていてほしい。

気づかれないことが、いちばんの、誇り。
——あなたが、何も考えずに、行きたい場所へ行ける。その毎日を、支える人がいる。

仲田電機
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